ある覚者の囁き
ある所にひとりの覚者がいました
そこにひとりの弟子が訪れてこうお願いしました
「私にひとことだけ言葉をお授けください」
すると覚者はこう言いました
「何もしないこと」
弟子はこうべを垂れ感謝の言葉を述べるとその場所を後にしました
それからというもの弟子は来る日も来る日も
「何もしないこと」を常に考え続け
どうしたら何もしないでいられるか
そのことに生涯を捧げました
そして月日がたち男はとうとう「何もしないこと」なく最後の日を迎えてました
「結局分からなかった 私はどうすれば『何もしないこと』が出来たのだろう もう...私に残された時間はない......ああ、もう...無理だ...どうにもなら.........あっ」
かくして彼は最後の最後で全てを手にすることになったのでした
おしまい